電気の検針票の在り方について(その1)

電気の検針票の在り方について(その1)

電力消費者センター

2017年4月16日


 2016年4月の電力小売全面自由化以降、多くの小売電気事業者(新電力や旧一般電気事業者)が、「紙の」検針票を発行しなくなりました。

厳密には、まったく発行しないわけではないのですが、デフォルトでは「紙の検針票無し」となっており、紙の検針票の発行・郵送を希望する消費者には「有償」(例えば月額200円)で発行・郵送する、有料オプション扱いとなっています。

すでにクレジットカードなど、他の分野でこのような有料オプション扱いが広がりつつありますので、電気だけを特別に嘆く必要はないのかもしれませんが、それでもやはり、傍観できないことだ、と考えています。


 従来、日本では紙の検針票が「毎月」、消費者の家に届けられていました。これは当たり前のように感じるかもしれませんが、世界的に見れば決して当たり前ではなく、とても良いサービスを受けていた、と言えます。

諸外国では、そもそも検針が毎月ではなく、年に1回という国もあります。この場合、当然、検針票の発行も年に1回となってしまいます。

日本では、慣習的に毎月の検針であったこと、人が目で検針し、その場でハンディターミナルで印刷し、直接郵便受けに投函していたことから、郵便代が掛からず、無料で検針票を発行・お届けすることが出来ていました。(そもそも、従来型の検針票は郵送ではない、ということを、どれだけ多くの消費者が認識しているでしょうか…)

 新電力(自由化以降に新規参入した小売電気事業者)は、自社では検針を行いません。検針は送配電事業者の業務であり、すべての小売電気事業者は送配電事業者から、毎月の検針データを受領します。紙の検針票を作成する場合、そのデータに基づき検針票を作成・印刷しますが、消費者にお届けするには、ほぼ「郵送」しか手段がありません。葉書サイズの場合、紙代・印刷代のほかに郵便代52円が掛かります。この費用を節約したい、電気料金を安く見せたい、と考える事業者がいても不思議ではありません。


 検針票には、重要な情報が記載されています。支払総額のほか、電気の使用量、その月の使用量は前月や前年同月と比べ、どの程度増えたのか減ったのか、など省エネに役立つ情報も記載されています。たとえ、消費量増減を見ないとしても、支払総額を見ることだけでも、「あぁ、こんなに使っちゃった。来月は少し節電しなきゃな」と感じさせる効果があると考えられます。これも省エネ・節電に役立つ効果です。


 紙の検針票が手元に届くと、一旦はそれを目にする人が多いのではないでしょうか。封書ではないので開封する必要はなく、手に取れば、表面か裏面のいずれかをちらっとでも目にしているのではないだろうかと思います。たとえすぐにゴミ箱行きだとしても…

これが紙の検針票ではなく、「webで見ることが出来ます」という方式の場合(たとえ通知はメールであってもメール本文に明細が記載されることは皆無。詳細情報はwebにアクセスする必要がある)、やはり面倒で、結局アクセスしない、という人も多いのではないだろうかと推測します。もちろん、インターネット環境の無い市民・消費者も多数いらっしゃいます。


 自由化により、消費者の選択肢は増えました。が、消費者が納得できる選択を行うためには、きちんとした情報が必要です。選びたい消費者は紙の検針票を発行する事業者を選べばよいという問題ではなく、日本全体としては、消費者に与えられる情報は減ってしまった、ということを問題だと考えています。

「私」が選ぶだけでなく、「他の人」が選ぶことによっても、社会はどんどん変わっていくのです。

この情報過多の時代に、ただ情報をwebサイトに置いておくだけでは効果は薄く、紙の検針票が手元に届くことにより、否が応でもそれを目にする、そんなちょっとした「お節介」が役に立つこともあるだろうと考えています。

これが「善意」や高潔な意思だけではなく、「制度」で解決できるのではないか?と考える一例です。


 自由化に際して、多くの消費者団体・市民団体で、電源構成の表示を義務付ける声が上がりました。もちろん、私たちも賛同しています。

が、検針票が発行されないならば、普段、電源構成を目にすることはなく、運動の狙いは半減してしまいます。

また料金の内訳として、託送料金相当額も記載されています。ただしこれは、旧一般電気事業者(従来の大手独占電力会社)の検針票には必ず記載されていますが、新電力でこれを記載する事業者は多くありません。

小売電気事業者は、「電力の小売営業に関する指針 」や「適正な電力取引についての指針 」を遵守することが求められています。

私たち消費者は、事業者がこれらの今ある指針を遵守しているかどうかを注視するとともに、指針は本当に望ましい内容であるのかどうか、しっかり考えていく必要があります。

以上

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