電気の検針票の在り方について(その2:電力会社の切り替え)
電力消費者センター
2017年4月16日
前回、「電気の検針票の在り方について(その1)」では、紙の検針票のメリットと、その表示内容について考察しました。
今回は、電力会社切り替え(スイッチング)と検針票の関係に着目してみましょう。
電力会社を切り替える(スイッチする)には、幾つかの情報が必要となります。
そして、それらの情報は通常、検針票や当初の契約締結通知に記載されています。
電力会社の切り替え手続き(スイッチング)を行うためには、元々の「正しい」情報と、切り替え申し込みの情報がすべて一致する必要があります。
電力会社の切り替えに必要な情報
1.電気の契約名義
2.供給地点特定番号(地点番号)
3.電気の使用場所
4.電気のお客様番号(契約番号)
1.電気の契約名義
これは、実際に申し込もうとする人の名前とは異なることがあります。例えば、電気の契約名義は元の世帯主(祖父:Aさん)であり、祖父Aさんはすでに他界したが名義はそのまま、ということがよくあります。
正しい名義が祖父Aさんなのに、電力会社切り替えの申し込み名義が今の世帯主(父:Bさん)ならば、これは不一致となり、切り替えることが出来ません。
もう一つ、名義で大きな問題があります。
「山田太郎」さんが名義人であることは分かりました。が、正しい名義は漢字ではなく、「ヤマダタロウ」というカタカナであることがよくあります。(ご自分の検針票をご覧になって下さい。思いがけない名義となっている可能性があります)
正しい名義が「ヤマダタロウ」なのに、電力会社切り替えの申し込み名義が「山田太郎」ならば、これは不一致となり、切り替えることが出来ません。感覚的にはおかしいと思われますが、現在のシステムでは厳密な一致を求められています。
よって、正しい名義は何なのか?を知ることはとても重要だということがご理解頂けると思います。
旧一般電気事業者(従来の大手独占電力会社)の検針票には、この名義が記載されています。が、電気の契約名義と異なるお名前を記載している事業者や、そもそも検針票を発行しない事業者の場合、この名義を知ることが出来ません。当初の契約締結通知が見つかればよいですが、通常、電話での確認が必要になると考えられます。
2.供給地点特定番号(地点番号)
電気の使用場所には、1つ1つ異なる番号が付けられています。これを供給地点特定番号(地点番号と略します)と呼びます。地点番号は全国共通に22桁の数字であり、「場所」に紐付けられているため、小売電気事業者を切り替えても(スイッチングしても)、地点番号は変わりません。ある意味、契約名義以上に重要な情報であり、切り替えの際には最も重要な情報となります。
よって、これは必ず検針票に記載することが望ましいと言えます。さもないと、事業者に電話等で確認するしかありません。
ところが実際には、この大事な地点番号を検針票に記載していない事業者(新電力)も存在します。
電話等で尋ねることが面倒だと感じた消費者は、電力会社を切り替えることが出来ません。切り替えの阻害要因の一つとなっています。
3.電気の使用場所
通常であれば、電気を使用する「住所」だ、と思われるかもしれません。が、これも昔々に電力会社が登録した住所であるため、多くの間違いがあるようです。(ご自分の検針票をご覧になって下さい。思いがけない住所となっている可能性があります)
それでも、その間違った住所が、電気の契約上は「正しい」住所なのです。
登録上の「正しい」住所と、切り替え申し込み住所が不一致の場合、これしか情報が無ければ切り替えることが出来ませんが、上記の「地点番号」があれば、これで正しい住所を知ることが出来ます。
4.電気のお客様番号(契約番号)
切り替える前の現在の小売電気事業者(例えば東北電力)が、消費者ごとに付けた番号があります。いわゆる、お客様番号(契約番号)です。上記の「地点番号」は全国共通に22桁でしたが、お客様番号は事業者ごとに桁数がバラバラです。本来はこれも義務的に統一することが望ましかったと考えています。
電気の切り替えには、これも必須の情報です。これが不一致であれば、切り替えることが出来ません。
ここまで読むと、電気の切り替えを申し込むにあたっては、検針票を正しく「書き写す」ことが必要であることがご理解頂けると思います。
よって各小売電気事業者が、これらの情報を正確に検針票に記載することは、現実的に必須だと言えます。
紙の検針票を発行しないという自由が事業者にはありますが、その場合、電話やメール等でのこれら情報の問合せが必要となり、その手間が消費者に切り替えを躊躇させる可能性があります。これは切り替えの阻害要因の一つであると考えられます。
紙の検針票を発行することは、電力会社切り替えを促す効果があると言え、自由化開始後の当面の間は、紙の検針票を発行することを義務付けることが、自由化による競争を促進させ、結果として消費者にメリットをもたらすことが期待されます。
以上
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